普通の人が持ち合わせている共通の知識、判断力を常識(common sense)と言い、さらに健全で優れた見識、判断力を良識(good sense)と言っている。英語の部分をフランス語で見ると、良識はボン・サン(bon sens)になる。ボンはグッド、サンはセンスである。
ついでに言うと、体つきがスマートで、人の応対にもそつがない、“粋”(いき)でおしゃれな男性はダンディー(dandies)と呼ばれる。筆者の知人はボンに漢字の“凡”を当て、男性名詞のダンディーを“男児”に置き換えて、自らのペンネームを「凡男児」としている。
良識派でダンディーなプロ野球の“凡男児”はいっぱいいる。でもWBC日本代表チームの原辰徳監督(巨人軍監督)にはかなわない。まつわりつく、いくつもの侮蔑(ぶべつ)をその都度払い退けて理想の“凡男児”に成長してきた。
長嶋監督が突然辞任して原監督になった。就任1年目で日本一、2年目3位、突然のごたごたで退いた。「おれから離れないでくれ」と渡辺オーナーに懇願され読売グループ内にとどまった。堀内監督が2年で挫折すると再登場して1年目4位、2年目優勝、クライマックスシリーズで中日に敗れ日本シリーズ出場を失う。3年目の昨シーズンはリーグ優勝したが日本シリーズで西武に敗れ、プロ野球の王座につけなかった。4年目の今年、リーグ3連覇とプロ野球日本一、WBCで2度目の世界一を目指す。
北京オリンピックで“星野ジャパン”が惨敗し、帰国するとバッシングの嵐に遭い、星野監督は追われ、原監督がWBC日本代表チームの監督になった。原監督は、監督名をチームの“頭”につけるのを嫌い、イチローをモチーフ(motif)にしたとみられる“サムライジャパン”を考案し、国を代表して戦う意義を「日本力(ぢから)」に置きチームのスローガンにした。
WBCの最重要課題は“投球数の制限”を逆手にとって、投手のローテーションを“投球数ごと”にすることだ。先手を打ってWBC監督就任を辞退表明した落合監督は、一昨年のオールスターゲーム第1戦で、「投手1人、1イニング」作戦を取り、パ・リーグの打者を完封して投手のすごさを満天下に見せつけた。
世界に日本の投手の“すごさ”を見せるには、「投手1人、20球以内」にして投手が投球数を満了したら躊躇(ちゅうちょ)なく交代させる。全試合を投手の平均した投球数で守り、打線の中心に投、攻、守そろったイチローを置けばなおのこといい。
(渋沢良一 前セ・リーグ事務局長)